好哉は高卒である。
好哉に係わる人間は、ほとんど同級生か先輩・後輩の上下各2年に収まり、大人は先生と親などであった。
1クラス35人で4クラスあれば、1学年140人。
上下各2学年を合わせると、700人にもなる同世代。
当然全ての人と関わりがあるわけではない。
日常的に接する人数は、クラスメイト35人、部活の先輩後輩30人程度、先生6~7人と親である。
圧倒的に同世代との関りが深くなる。
8割~9割は同世代だ。
その当時に同世代間だけで流行っているもの
同世代の価値観
教育として受ける新たな価値観
親世代から受ける価値観(親が学生の時の価値観ではなく、親になってからの価値観)
世界は、自分たちを中心に回っていた。
世界の価値観は自分たちの価値観であった。
卒業するまでは!
卒業して就職した好哉を見てみよう。
高卒なので、自分が一番年下である。
同期は、高卒の同じ年、専門学校卒業の2コ上、大卒の4コ上。
会社の社員には、1コ上の19歳の先輩から定年を迎えてもなお働いている66歳の大先輩まで幅広くいる。
全員が年上だ。
ステークホルダー(先輩(上司)・お客様等)のほとんどが自分より年上だ。
社内では10歳以上離れている人の人数が比較的多い。
社外のお客様では、30才以上離れている人がほとんどだ。
食料品店の経営者がお客様なのだ。
ほとんどが好哉から見たら高齢だ。
デパートの食料品売り場に務めている社員には、好哉の同年代がチラホラと見受けられるぐらいだ。
好哉に関わる9割が同世代だった学生時代から一変し、関わる9割が年上、しかも年が離れているのである。
価値観は、完全に昭和だ。
平成の初期に学生時代を過ごした好哉の世代は、昭和の感覚をある程度持ちつつも、新しい価値観を持つ世代なのだ。
パソコンの操作もある程度は授業で経験している。
まだ、DOS/Vだが。(Windows93発売前である)
好哉が働きだしたこの時期は、書類の手書きが当たり前の時代だ。
酒の付き合いは、少し希薄になりつつある時代。
会社の上層部(役員)には、社内で怒鳴り散らすような人が残っている。
比較的、仲間意識の強い学生時代を過ごした好哉にとっては、社内で怒鳴り散らす役員に違和感を感じている。
同じ社内の仲間なのに
一緒に働いている仲間なのに
同じ目的を持って
同じ方向に進んでいる同士なのに
これはジェネレーションギャップなのか、
その役員特有の特性なのか?
年上は偉いのか?
役職がつけば人間的に偉くなるのか?
確実に言えることは、
好哉は、その役員のことを尊敬できないということである。
給料は高いかもしれない・・・
比較的良い暮らしをしているのかもしれない・・・
しかし、好哉が考える人生とは違う気がしている。
その役員を批判することはないが、違和感を持っているのである。